労災給付と石綿健康被害救済給付
アスベスト(石綿)による健康被害にあわれた方のために、国への給付金・賠償金請求や企業への損害賠償請求以外では、「労働者災害補償保険制度(労災保険制度)」と「石綿健康被害救済制度」という救済制度が設けられています。
下記に対象となる方と、それぞれの制度で受けられる給付内容をご紹介します。
労災保険による給付
労災保険制度とは、仕事中の負傷、疾病、障害、死亡などの業務災害を被った労働者の方やそのご遺族に対して、労働者災害補償保険法に基づくさまざまな費用や年金などが支給される制度です。
アスベスト(石綿)による健康被害に関しては、現在働いている方および以前働いていた方が、業務中にアスベスト(石綿)を吸い込んだことが原因で石綿肺、肺がん、中皮腫などの病気になったり、亡くなられたりした場合に、労働基準監督署が「仕事による疾病である」と認めれば、労災保険による補償を受けることができます。
労災保険で受けられる保険給付には下記のものがあります。
療養(補償)給付 | 療養の給付/療養の費用を支給 |
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休業(補償)給付 | 休業4日目から休業1日につき【給付基礎日額の60%】を支給 |
傷病(補償)年金 | 療養開始から 1 年 6 ヵ月経過しても病気が治癒していない場合に、傷病等級に応じて年金を支給傷病補償年金を支給 |
障害(補償)給付 | 障害が残った場合に、障害等級に応じ、年金または一時金を支給 |
介護(補償)給付 | 障害が残り介護が必要となった方に対し、介護費用を支給 |
遺族(補償)給付および葬祭料(葬祭給付) | 亡くなった労働者の方のご遺族に対し、遺族補償年金または一時金および葬祭料を支給 |
厚生労働省「石綿ばく露作業による労災認定等事業場一覧表」
(令和3年度版)
※労災給付と賠償金とでは支給目的が違いますので必ずしも記載されている事業所の労働者のみが補償の対象となるわけではありません。
石綿健康被害救済法による給付
アスベスト(石綿)による健康被害のうち、仕事でアスベスト(石綿)に起因する疾病に罹患した場合は労災給付の対象となりますが、労災保険の対象とならない石綿健康被害者(石綿を扱う仕事をしていたかどうかは問いません)や、その方のご遺族に対しても迅速に救済をするために、石綿健康被害救済法が制定されました。
なお、石綿健康被害者の救済を充実させるため、平成23年8月30日に石綿健康被害救済法が改正されました。具体的には、救済給付のうちの「特別遺族弔慰金」と「特別葬祭料」、そして特別遺族給付金の請求期限がそれぞれ10年間延長され、それとともに特別遺族給付金(特別遺族年金・特別遺族一時金)の支給対象が拡大されています。
救済給付には次のものがあります。
医療費 | 医療費の自己負担分を支給 |
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療養手当 | 治療に必要な医療費以外の費用負担に対して支給される給付 |
葬祭料 | 指定疾病に認定された患者が亡くなった場合に、その葬祭に伴う費用負担に対して支給される給付 |
特別遺族弔慰金・特別葬祭料 | 指定疾病により亡くなった方の遺族に対する弔慰等を目的として支給される給付 |
救済給付調整金 | 指定疾病に認定された方が亡くなるまでに給付を受けた医療費と療養手当の合計が特別遺族弔慰金の額に満たない場合に、認定患者のご遺族に支給される給付 |
また、時効により労災保険による遺族補償給付を受けられなくなった労働者のご遺族に支給されるものとして、「特別遺族給付金」があります。対象となる方は、下記の2つのいずれかの給付を受けることができます。
特別遺族年金 | 原則として年額240万円 |
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特別遺族一時金 | 1,200万円 |