アスベストをどのくらい吸ったら病気になる?健康被害の内容や対処法なども解説

アスベストをどのくらい吸ったら病気になる?健康被害の内容や対処法なども解説

更新日:2024年08月13日

この記事でわかること

  • 吸い込んだアスベストの量と病気の発症の関連性
  • アスベストが原因で発症する可能性のある病気
  • アスベストによる健康被害で受け取れる補償

アスベストを大量に吸い込んだ場合、重篤な疾患を発症する可能性があります。
では、どのくらいの量を吸い込むと病気になるのでしょうか。
このコラムでは、アスベストをどのくらい吸うと発症するのか、どのような病気を発症するのか、そして、病気を発症した方が国から受け取れる補償について解説します。

目次
  1. 吸い込んだアスベストの量と病気の発症の関連性
    1. アスベストとは
    2. なぜアスベストを吸ってしまうと危険なのか
    3. アスベストをどのくらい吸うと発症する?
  2. アスベストが原因で発症する可能性のある病気とは
    1. 1. 石綿肺
    2. 2. 肺がん(原発性肺がん)
    3. 3. 中皮腫
    4. 4. びまん性胸膜肥厚
    5. 5. 良性石綿胸水
  3. アスベストによる健康被害が疑われる場合は病院で検査をする
  4. アスベスト健康被害で国から受け取れる補償
    1. 建設アスベスト給付金
    2. 工場型アスベスト賠償金
    3. 労災保険による給付
    4. 石綿健康被害救済制度による給付
  5. まとめ

吸い込んだアスベストの量と病気の発症の関連性

アスベストとは

アスベスト(石綿)は、その繊維が極めて細いにもかかわらず、丈夫で熱や摩擦などに強く、かつ変化しにくいという特性があります。
その特性を活かし、保温材、断熱材などの建材や防音材などの工業製品に幅広く使用されていたアスベストですが、吸い込んでしまうと、石綿肺や肺がんなどの重い病気を発症する可能性があります。しかも、アスベストを吸ってすぐ症状が出るわけではなく、長い潜伏期間を経てから出てくるのです。

そのため、仕事でアスベストを含む建材などを扱っていた方々やその家族、近隣住民の方々は、知らず知らずのうちにアスベストを吸い込んでしまっていました。そして、その当時から数十年経った今、健康被害者が急増しているのです。

なぜアスベストを吸ってしまうと危険なのか

飛び散ったアスベストを吸い込むことによる危険性が叫ばれる理由としては、下記のような点が挙げられます。

  1. 吸い込んだアスベストの繊維が肺の組織に傷をつけること
  2. 一度吸い込んだアスベストは、体内で分解されずに肺の組織に長期間残り続けること
  3. 非常に軽い繊維で、知らずに吸い込んでしまっている可能性があること
  4. アスベストにばく露(さらされて、吸い込むこと)してから発症するまでの潜伏期間が非常に長いこと(たとえば、肺がんの多くは15~40年、中皮腫は20~50年も経ってから発症する)

など

アスベストをどのくらい吸うと発症する?

現時点では、どのくらいの量のアスベストを吸った場合に病気を発症するかについては明らかになっていません。
また病気が進行しているにもかかわらず、なかなか症状が出ないこともあります。
もし、以前アスベスト関連企業などに勤務し、アスベスト製品を扱っていたという方は、症状の有無にかかわらず、定期的に検査を受けることをおすすめします。

アスベストが原因で発症する可能性のある病気とは

アスベストが原因で発症する可能性のある病気は下記の5つです。

  1. 石綿肺
  2. 肺がん(原発性肺がん)
  3. 中皮腫
  4. びまん性胸膜肥厚
  5. 良性石綿胸水

1. 石綿肺

石綿肺とは

石綿肺は、アスベストを大量に吸い込むことにより、肺が線維化する肺線維症(じん肺)という病気の一つです。

症状

石綿肺の初期症状としては、軽い息切れや運動能力の低下、咳や痰が多く見られ、進行するにつれて呼吸が困難となり、重度の息切れや呼吸不全が起こる場合もあります。

潜伏期間

石綿肺の潜伏期間は15年~20年と言われています。

2. 肺がん(原発性肺がん)

原発性肺がんとは

原発性肺がんは、気管支あるいは肺胞を覆う上皮に発生する悪性の腫瘍です。

症状

原発性肺がんの症状としては、咳、痰、血痰、胸の痛み、動いたときの息苦しさ、発熱といった症状がよく見られます。また、アスベストの吸引と喫煙の2つが重なった場合、肺がんになる危険性が高くなると言われています。

潜伏期間

通常、アスベストの吸引から原発性肺がんを発症するまでの潜伏期間は30 ~ 40年と長く、吸い込んだアスベストの量が多ければ多いほど、肺がんになる危険性が高くなることが指摘されています。

3. 中皮腫

中皮腫とは

中皮腫は、肺を覆っている胸膜、肝臓や胃などの臓器を覆っている腹膜、心臓および大血管の起始部を覆っている心膜などに発生する悪性腫瘍(がん)のことです。

症状

悪性中皮腫の約8割を悪性胸膜中皮腫が占めており、約2割弱が悪性腹膜中皮腫、残りがその他の部位からの発症です。
中皮種の症状としては、胸膜中皮腫では、胸痛や咳、呼吸困難や胸部圧迫感が多く見られ、発熱や体重減少が見られることもあります。
腹膜中皮腫は、早期には症状が出ず、進行した場合に腹水貯留によるお腹の張り、腹痛、腰痛、食欲低下、排便の異常、腹部のしこりなどが見られることがあります。

潜伏期間

中皮腫の潜伏期間は20~50年と言われています。

4. びまん性胸膜肥厚

びまん性胸膜肥厚とは

びまん性胸膜肥厚は、肺を覆う胸膜が慢性的に炎症を起こし、線維化して厚くなる病気です。比較的高濃度のアスベストにさらされた場合に発症すると言われています。胸膜の線維化は徐々に広がっていくのが特徴です。

症状

びまん性胸膜肥厚の初期症状としては無症状のことが多く、あっても軽度の運動時の息切れ程度です。ただ、病気の進行するに従って肺の動きが悪くなり、呼吸困難、反復性の胸痛、反復性の呼吸器感染などが見られるようになります。

潜伏期間

びまん性胸膜肥厚の潜伏期間は30~40年と言われています。

5. 良性石綿胸水

良性石綿胸水とは

良性石綿胸水は、胸腔内に胸膜炎による胸水が貯まる病気です。
比較的高濃度のアスベストを吸い込んだ場合に発症するとされていますが、胸水は自然に消失することもあれば、長期にわたって残る場合もあり、診断が難しい病気です。

症状

良性石綿胸水の症状としては、呼吸困難や胸の痛みがある場合もあれば、自覚症状がない場合もあります。約半数の方は胸水が自然に消失して治癒しますが、なかには何度も繰り返すことでびまん性胸膜肥厚が発生し、呼吸機能障害をきたす方もいます。

潜伏期間

良性石綿胸水の潜伏期間は10年内~40年以上と言われています。

アスベストによる健康被害が疑われる場合は病院で検査をする

アスベストを吸い込んだ場合、その多くは痰などに混じって体外に排出されます。ただ、大量に吸い込んだ場合は、肺胞に沈着し、その一部は肺の組織内に長期間留まります。

アスベストを吸い込んだ可能性のある方は、定期的に健康診断を受け、胸部X線検査を受けましょう。また、健康診断のみでは発見が難しい場合もあるため、合わせて専門的な医療機関でがん検診などを受けることをおすすめします。

なお、お仕事でアスベストを取り扱っていた方で、所定の要件を満たす方は、健康管理手帳の交付を受けられます。健康管理手帳が交付されると、指定された医療機関で年に2回無料で定められた項目の健康診断を受けることが可能です(じん肺の健康管理手帳については年に1回)。
ぜひ参考にされてください。

また、発症した方は早急に医療機関等で診察や治療を受けましょう。特に、下記のような症状に覚えがある方は、早急に医療機関等などに行くことをおすすめします。

<注意したい症状>

  • 息切れがひどくなった
  • せきやたんが以前に比べて増えた
  • たんの色が変わった
  • たんに血液が混ざった
  • 顔色が悪いと注意された
  • 爪の色が紫色に見える
  • はげしい動悸がする
  • 風邪をひいて、なかなか治らない
  • 微熱が続く
  • 高熱が出た
  • 寝床に横になると息が苦しい
  • 食欲がなくなった場合や急にやせた
  • やたらに眠い

引用:日常生活における症状はありますか?|厚生労働省

アスベスト健康被害で国から受け取れる補償

アスベストが原因で発病した方が国から受けられる補償は下記の4つです。

  • 建設アスベスト給付金
  • 工場型アスベスト賠償金
  • 労災保険による給付
  • 石綿健康被害救済制度による給付

建設アスベスト給付金

【対象者】

吹付作業、建設作業等でアスベストを含む建材を扱う建設現場で働き、健康被害に遭った方で、かつ下記の要件を満たす方

【要件】

  1. 昭和47年10月1日~平成16年9月30日までの間(※)に、屋内の建設作業現場(屋内吹付作業務も含む)にて、石綿粉じんにばく露する作業に従事していたこと

    ※昭和47年10月1日~昭和50年9月30日までの間は吹付作業に限る。

  2. ①により、アスベスト(石綿)に起因する石綿肺、肺がん、中皮腫、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水などの健康被害を被ったこと
  3. 労働者や一人親方等であったこと(またはその遺族であること)

【受け取れる金額や内容など】

病状に応じて、550万円~1,300万円の給付金が受け取れる

工場型アスベスト賠償金

【対象者】

大阪泉南アスベスト訴訟の最高裁判決に基づき、下記の要件を満たす元労働者もしくはそのご遺族の方

【要件】

  1. 昭和33年5月26日~昭和46年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべきアスベスト(石綿)製品の製造・加工工場や作業場で、石綿粉じんにばく露する作業に従事していたこと
  2. ①の結果、アスベスト(石綿)に起因する石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚などの健康被害を被ったこと
  3. 提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること

【受け取れる金額や内容など】

病状に応じて、550万円~1,300万円の賠償金が受け取れる

労災保険による給付

【対象者】

仕事中の負傷、疾病、障害、死亡などの業務災害を被った労働者の方やそのご遺族の方

【要件】

現在働いている方および以前働いていた方が、業務中にアスベスト(石綿)を吸い込んだことが原因で石綿肺、肺がん、中皮腫などの病気になったり、亡くなられたりしたことが、「仕事による疾病である」と労働基準監督署から認められたこと

【受け取れる給付】

療養補償給付、休業補償給付、傷病補償年金、障害補償給付、介護補償給付、遺族補償給付、葬祭料

石綿健康被害救済制度による給付

【対象者】

労災保険の対象とならない石綿健康被害者の方(石綿を扱う仕事をしていたかどうかは問わない)や、そのご遺族の方

【要件】

日本国内においてアスベストを吸入することにより指定疾病で療養中の方または指定疾病でお亡くなりになった方のご遺族である旨の認定を、独)環境再生保全機構から受けること

【受け取れる給付】

医療費、療養手当、葬祭料、特別遺族弔慰金・特別葬祭料、救済給付調整金

なお、時効により労災保険による遺族補償給付を受けられなくなった労働者のご遺族に支給されるものとして、石綿健康被害救済制度に基づく「特別遺族給付金」があります。

アスベストを吸ったことがあり心配な方は弁護士に相談

アスベスト健康被害の給付金や賠償金を受け取るためには、必要な書類を準備したうえで適切な手続を行う必要があります。
もちろん、ご自身で行うことも可能ですが、証拠集めや申請手続は複雑で時間がかかりますし、工場で働いていた方であれば裁判所に対して訴訟を提起しなければなりません。

スムーズに手続を完了し、適切な補償を受け取るためには、アスベスト健康被害に詳しい弁護士に相談されるのが得策です。

まとめ

本コラムのまとめは下記のとおりです。

  • アスベストを吸い込んでしまうと肺の組織に傷をつけ、肺がんなどの重い病気を発症する可能性がある。
  • 一度吸い込んだアスベストは体内で分解されず、肺の組織に長期間残り続ける。
  • 長い潜伏期間を経てから症状が出てくる。
  • 知らずに吸い込んでしまっている可能性がある。
  • アスベストをどのくらい吸うと発症するかは、現時点では明らかになっていない。
  • アスベスト健康被害で受け取れる補償には、下記の4つがある。
    • 1. 建設アスベスト給付金
    • 2. 工場型アスベスト賠償金
    • 3. 労災保険による給付
    • 4. 石綿健康被害救済制度による給付

アディーレ法律事務所では、工場型アスベスト訴訟や建設アスベスト給付金の請求手続に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として報酬は給付金・賠償金受け取り後の後払いとなっております。

そのため、当該事件をアディーレ法律事務所にご依頼いただく場合、原則としてあらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません(※)

※委任事務を終了するまでは契約を解除できます。この場合には、例外として成果がない場合にも解除までの費用として事案の進行状況に応じた弁護士費用をお支払いいただく可能性もございます。

詳しくは「弁護士費用」をご覧ください。

アスベストで病気になった可能性のある方やアスベスト被害にあわれた方またはそのご遺族の方は、アスベスト健康被害に積極的に取り組んでいるアディーレ法律事務所にお気軽にご相談ください。

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