アスベスト健康被害の給付金とは?給付の種類や要件、申請方法などについて解説
更新日:2024年08月13日
この記事でわかること
- アスベスト給付金の種類や要件
- アスベスト給付金の申請方法
- アスベスト給付金がもらえる時期
アスベスト健康被害を受けた方々に対して、国が用意した補償制度にはいろいろなものがありますが、被害者の方が、ご自分がどの給付金の対象者なのか、どういった申請手続をすればいいのかを把握するのはなかなか難しいことだと思います。
本コラムでは、アスベスト給付金の種類や要件、申請方法を保証制度ごとに詳しくご紹介します。
また、アスベスト給付金の申請を弁護士に依頼したほうが理由などについても合わせて解説していきます。
- 目次
アスベスト健康被害の給付金とは?
アスベスト(石綿)に関連する健康被害は、過去に使用されていた建材や工業製品に含まれていたアスベストが原因で発生します。アスベストによる健康被害には、肺がん、中皮腫、石綿肺などがありますが、潜伏期間が長く、発症までに数十年かかることがあります。
アスベスト健康被害にあった方を救済するため、建設アスベスト給付金、労災保険による給付、石綿健康被害救済制度による給付という3つの給付金制度が設けられています。
それぞれについて、以下で詳しく説明します。
建設アスベスト給付金
<建設アスベスト給付金支給開始の背景>
2021(令和3)年5月17日、アスベスト(石綿)を含む建材を用いて建設作業に従事していた元建設作業員およびその遺族が、アスベストによる健康被害を被ったのは、国が規制権限を適切に行使しなかったからであるとして、国家賠償法に基づく損害賠償を求めた訴訟について、国と建材メーカーの賠償責任を認める最高裁判決が言い渡されました。
この最高裁判決を受けて、2021年5月18日に「基本合意書」が締結されました。また、2021年6月9日に「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律(以下、「給付金法」といいます)」が可決・成立しました。
この法律により、建設アスベスト被害者やその遺族は、訴訟手続を行わずに、最大1300万円の給付金を国から受け取ることが可能となりました。
【対象者】
【要件】
【申請手続】
必要書類を収集のうえ、厚生労働省の「建設アスベスト給付金担当」宛てに郵送します。
この際、簡易書留やレターパックなど配達状況が確認可能な方法で郵送するようにしましょう。
必要書類は、請求される方が被害者ご本人かご遺族の方か、すでに労災の認定を受けたかどうか、などによって異なります。
詳細については厚生労働省のWebサイトをご覧いただくか、アスベスト給付金に詳しい弁護士にご相談ください。
【受け取れる金額】
病態に応じて、550万円~1,300万円の給付金が受け取れます。
病態 | 慰謝料基準額 |
---|---|
死亡 | 1,300万円 石綿肺(管理2・3で合併症ありまたは管理4)、肺がん、中皮腫、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水による |
1,200万円 石綿肺(管理2・3で合併症なし)による |
|
肺がん | 1,150万円 |
中皮腫 | 1,150万円 |
著しい呼吸機能障害を伴う びまん性胸膜肥厚 |
1,150万円 |
良性石綿胸水 | 1,150万円 |
石綿肺 じん肺管理区分の管理4 |
1,150万円 |
石綿肺 じん肺管理区分の管理3 |
950万円 (合併症がある場合) |
800万円 (合併症がない場合) | |
石綿肺 じん肺管理区分の管理2 |
700万円 (合併症がある場合) |
550万円 (合併症がない場合) |
【注意事項】
- すでに給付金を受給している方の症状が悪化し、病態区分が変更になった場合、追加給付金の請求ができます。追加請求した場合は、変更後の病態区分の支給額とすでに受給した支給額との差額が支給されます。
- 建設アスベスト給付金は、労災保険給付や石綿健康被害救済制度の給付の支給を受けている場合にも請求することができます。
支給額が減額される場合もある
給付金制度の受給要件を満たしていても、支給額が減額されるケースがあります。
減額されるのは、建設現場でアスベストにさらされ、吸い込んでいた期間が一定期間を下回っていた場合です。
- 肺がん・石綿肺の場合…10年未満
※肺がんでかつ喫煙の習慣があった場合にさらに支給額が10%減額される
- 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚の場合…3年未満
- 中皮腫・良性石綿胸水の場合…1年未満
労災保険の給付
アスベスト吸引との関連が明らかな病気を発症し、それが業務中にアスベスト(石綿)にさらされ吸い込んだことが原因である(業務上疾病)と認められた場合には、労災保険給付が支給されます。
労災保険とは、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して必要な給付を行う公的保険制度です。
【対象者】
【要件】
石綿肺、肺がん、中皮腫などの病気を発症し、それが「業務中にアスベスト(石綿)を吸い込んだことが原因である(業務上疾病)」と労働基準監督署から認められること
業務上疾病であると認定される要件については、『アスベスト(石綿)による疾病の労災認定』(厚生労働省/都道府県労働局/労働基準監督署)をご覧ください。
【申請方法】
労災保険給付の申請方法は下記のとおりです。
【受け取れる保険給付の内容】
労災保険で受け取れる保険給付としては下記があります。
受け取れる保険給付 | 保険給付の内容 |
---|---|
療養補償給付 | 療養の給付/療養の費用を支給 |
休業補償給付 | 休業4日目から休業1日につき【給付基礎日額の60%】を支給 |
傷病補償年金 | 療養開始から1年6ヵ月経過しても病気が治癒していない場合に、傷病等級に応じて年金を支給 |
障害補償給付 | 障害が残った場合に、障害等級に応じ、年金または一時金を支給 |
介護補償給付 | 障害が残り介護が必要となった方に対し、介護費用を支給 |
遺族(補償)給付および 葬祭料(葬祭給付) |
亡くなった労働者の方のご遺族に対し、遺族補償年金または一時金および葬祭料を支給 |
石綿健康被害救済制度の給付
石綿健康被害救済制度は、労災補償などの対象とならない方に対し迅速な救済を図ることを目的として『石綿による健康被害の救済に関する法律』に基づいて創設されました。
【対象者】
【要件】
【申請方法】
申請書や必要な提出資料、申請窓口などの詳細については下記をご覧ください。
[アスベスト(石綿)健康被害救済給付の概要|独立行政法人 環境再生保全機構]
【受け取れる保険給付の内容】
石綿健康被害救済制度に認定された場合の給付には、下記があります。
給付の種類 | 給付される内容 |
---|---|
医療費 | 医療費の自己負担分を支給 |
療養手当 | 治療に必要な医療費以外の費用負担に対して支給される給付 |
葬祭料 | 指定疾病に認定された患者が亡くなった場合に、その葬祭に伴う費用負担に対して支給される給付 |
特別遺族弔慰金・ 特別葬祭料 |
指定疾病により亡くなった方の遺族に対する弔慰等を目的として支給される給付 |
救済給付調整金 | 指定疾病に認定された方が亡くなるまでに給付を受けた医療費と療養手当の合計が特別遺族弔慰金の額に満たない場合に、認定患者のご遺族に支給される給付 |
なお、時効により労災保険による遺族補償給付を受けられなくなった労働者のご遺族に支給されるものとして、石綿健康被害救済制度に基づく「特別遺族給付金」があります。
その他のアスベスト健康被害の救済手続
アスベスト給付金以外に国が用意している制度としては、工場型アスベスト訴訟による賠償金があります。
2014年10月9日、最高裁は国側敗訴の判決を出しました(「泉南アスベスト(石綿)訴訟判決」)
この判決をもととして、同様の状況にあるアスベスト工場の元労働者やその遺族については、国を相手に国家賠償請求訴訟を提起し、所定の要件を満たすことが確認されれば、国と裁判上の和解をすることにより賠償金(和解金)を受け取ることが可能です。
賠償金(和解金)を受け取るためには、次の裁判上の和解要件を満たす必要があります。
<工場アスベスト訴訟の和解要件>
- 1958年5月26日~1971年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと。
- その結果、石綿による一定の健康被害を被ったこと。
- 提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること。
給付金の請求期限に注意
給付金の請求には請求期限があります。要件を満たしている場合でも、期限を超過してしまう請求できなくなってしまうため、注意が必要です。
建設アスベスト給付金
建設アスベスト給付金の請求期限は下記です。
【原則】
次のいずれか遅い日から20年
(1)じん肺管理区分管理2、管理3または管理4と決定された日
(2)石綿関連疾病にかかった旨の医師の診断があった日
【例外】
被害者が石綿関連疾病により死亡した場合は、死亡した日から20年
労災保険の給付
労災保険には、療養補償給付や休業補償給付など複数の保険給付がありますが、それぞれについて異なる時効が規定されており、保険給付を受けようとする際は注意が必要です。
保険給付の種類 | 時効 |
---|---|
療養補償給付 | 療養の費用を支出した日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年 |
休業補償給付 | 賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年 |
傷病補償年金 | 療養補償給付から監督署長の職権により移行されるため請求時効はない |
障害補償給付 | 傷病が治癒した日の翌日から5年 |
介護補償給付 | 介護を受けた月の翌月の1日から2年 |
遺族補償給付 | 被災労働者が亡くなった日の翌日から5年 |
葬祭料 | 被災労働者が亡くなった日の翌日から2年 |
石綿健康被害救済制度の給付にも請求期限があります。
給付金はいつごろもらえる?
各担当機関は、給付金支給までの期間を公表していませんが、だいたい下記のような期間がかかると言われています。ただし、事案によって大幅に変わることがございます。
給付金の種類 | もらえる時期 |
---|---|
建設アスベスト給付金 | 厚生労働大臣の認定決定があった日の翌月末 |
労災保険の給付 | 申請から3ヵ月~6ヵ月程度 |
石綿健康被害救済制度の給付 | 申請から3ヵ月~6ヵ月程度 |
アスベスト給付金の申請は自分でできる?弁護士に依頼したほうがいい?
アスベスト給付金の請求手続は、弁護士に依頼せずにご自身で行うこともできます。
ただし、ご自身で給付金の請求手続を行う場合、下記の作業が必要になります。
給付金の受給要件を理解したうえで、必要資料を収集するのは、思ったよりも手間と時間がかかります。
アスベスト給付金の申請を弁護士に依頼したほうがいい理由
アスベスト給付金の申請手続を弁護士に依頼すれば、弁護士があらかじめ受給要件に該当するか否かの判断や、必要資料についてのアドバイスをしてくれるため、スムーズな資料収集が可能です。
また、弁護士によっては、必要資料の収集を代行してくれることもあります。
「私も対象かも!?」と思っている方はアディーレに相談
アスベスト給付金にはいろいろな種類があり、対象者や要件、申請方法などがそれぞれ違います。被害者の方ご自身で請求することは可能ですが、給付金請求には期限があります。
どうしたらよいかわからないうちに時効を迎えてしまう可能性もあります。
スムーズに手続し、給付金を受け取りたい方は、アスベスト給付金に詳しい弁護士に相談されるのが得策です。
アディーレ法律事務所では、工場型アスベスト訴訟や建設アスベスト給付金の請求手続きに関し、相談料、着手金は無料です。
また、成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
報酬は賠償金や給付金を受け取った後にお支払いいただきますので、原則としてあらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません(※)。
※委任事務を終了するまでは契約を解除できます。この場合には、例外として成果がない場合にも解除までの費用として事案の進行状況に応じた弁護士費用をお支払いいただく可能性もございます。
詳しくは「弁護士費用」をご覧ください。
現在、アディーレ法律事務所では、アスベスト被害に悩まれておられる方を一人でも多く救いたいとの想いから、アスベスト被害についての相談をお待ちしております。
アスベスト被害にあわれた方またはそのご遺族の方は、アディーレ法律事務所にお気軽にご相談ください。