船舶修理の下請会社の労働者がアスベストで中皮腫を患い死亡した事案について、親事業者の責任が認められた事例
※集団訴訟の場合は、全ての原告の認容合計額を記載しています。
概要
この事件は、Aさんの勤務先が下請けとなっていた船舶修繕作業中に、アスベスト(石綿)の粉じんにさらされて中皮腫というがんにかかったとして、亡くなったAさんの遺族が親事業者に対して損害賠償を求めたものです。
遺族は、被告である親事業者が作業現場での安全対策を怠ったために、Aさんが中皮腫になり死亡したと主張し、安全対策義務違反を理由に、損害賠償金5,149万5,187円と遅延損害金(2011年5月31日から支払いまでの法定年利5%)を請求しました。この請求額には、Aさんの治療費、慰謝料などが含まれます。
裁判のポイント
Aさんの作業環境および石綿ばく露の有無と死亡との因果関係
- Aさんが船舶の修繕作業中に石綿粉じんにさらされたかどうか
- 石綿ばく露と中皮腫り患、そして死亡との因果関係
被告の予見可能性と安全配慮義務の存在
- 被告が石綿の危険性を予見できたか
- 被告がAさんに対して安全配慮義務を負っていたか
被告の安全配慮義務違反の内容
- 作業環境管理義務違反
- 作業条件管理義務違反
- 健康管理義務違反
Aさんの被った損害額
- 治療費、付添看護料、入院雑費、休業損害、逸失利益、入通院慰謝料、葬儀関係費、死亡慰謝料、弁護士費用
過失相殺について
- 被告の主張するAさんの喫煙が中皮腫の原因であるとの主張の妥当性
裁判所の判断
裁判所は、Aさんが船の修理作業中にアスベスト(石綿)の粉じんにさらされ、その結果として中皮腫という病気にかかり亡くなったと認めました。
被告は、アスベストの危険性を予見できたにもかかわらず、適切な安全対策を取らなかったと判断され、具体的には、安全な作業環境の提供、防じんマスクや防護服の支給、安全教育の実施などを怠っていたとされました。
また、被告の主張する「Aさんの喫煙が中皮腫の原因である」という主張は、証拠が不足しているため採用されませんでした。
裁判所は、Aさんの遺族の損害賠償請求の大部分を認め、治療費、休業損害、逸失利益、入通院慰謝料、葬儀費用、死亡慰謝料、弁護士費用などを合わせて、総額4,624万5,952円を認めました。
※本ページで紹介している事例は、当事務所が実際に対応したものではありません。