アスベストを含む保温材の製造作業に従事していた労働者が肺がんを発症した事例
※集団訴訟の場合は、全ての原告の認容合計額を記載しています。
概要
この事件は、アスベスト(石綿)を含む保温材の製造作業をしていたBさんが、その作業中にアスベストの粉じんを吸い込み、肺がんを発症したものです。
Bさんは、肺がんを発症したのは、被告である国が法律に基づいて工場に排気装置を設置させる義務を果たさなかったからだと主張しました。そして国に対し、慰謝料と弁護士費用の合計1,265万円と、それに対する遅延損害金の支払いを求めました。
なお、その遅延損害金は、肺がんが確定した日である2014年2月4日から実際に支払われるまでの間、法律で定められた年利5%を求めています。
裁判のポイント
損害賠償請求権の遅延損害金の起算日
- Bさんは遅延損害金の起算日を肺がんの診断確定日(2014年2月4日)と主張
- 被告は遅延損害金の起算日を労災認定日(2015年9月30日)と主張
アスベスト関連疾患としての肺がんとじん肺の扱い
- 肺がんとじん肺を同様に扱うべきかどうか
- 肺がんの発症と行政上の決定の関係
平成25年大阪高裁判決の解釈
- アスベスト関連疾患による損害の発生日を「最も重い行政上の決定を受けた日」とする解釈の妥当性
- 平成25年大阪高裁判決が肺がんについて診断確定日を遅延損害金の起算日とした理由
被告の和解方針と公平性
- 被告の和解方針に基づいて和解した他の者との公平性
- Bさんについてのみ診断確定日を起算日とする遅延損害金を支払うことの適切性
裁判所の判断
裁判所は国に対して1,265万円の損害賠償と遅延損害金の支払いを命じています。
また、争点となった遅延損害金の起算日については、裁判所はBさんの主張を認め、2014年2月4日(肺がんの診断が確定した日)を起算日と判断しました。
国は「最も重い行政上の決定日を起算日とすべきだ」と主張しましたが、裁判所はこれを認めませんでした。
理由としては、原告が主張している損害は肺がんの発症に基づくものであり、国の反論にも理由がないことから、結論として「原告の肺がんの診断確定日を起算日とすることが妥当である」と判断しました。
※本ページで紹介している事例は、当事務所が実際に対応したものではありません。