農耕用クラッチの組立・研磨作業中にアスベスト粉じんにばく露した事例

判決
大阪地方裁判所平成22年4月21日
判決で認められた額
2,400万円
(および、原告Cさんには平成19年7月12日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金、原告Dさんには平成21年9月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金)

※集団訴訟の場合は、全ての原告の認容合計額を記載しています。

概要

本件の原告であるCさんは、被告である企業の従業員として、農業用機械に使用されるクラッチやブレーキなどの組立てや研磨作業を担当していました。このクラッチにはアスベストが含まれており、作業を続けた結果、Cさんは石綿肺やびまん性胸膜肥厚といった重度の肺機能障害を発症してしまいました。
Cさんは、発症の責任は従業員に対する安全配慮義務を怠った被告にあるとして、損害賠償を請求しました。また、Cさんの娘であるDさんも、Cさんの介護などが大きな負担となり、精神的な苦痛を被ったとして、同じく被告に対し損害賠償を求めました。

裁判のポイント

Cさんの作業内容および石綿粉じんのばく露

  • 原告側の主張:Cさんがアスベスト粉じんにばく露していた
  • 被告の主張:Cさんが研磨作業に従事しておらず、アスベスト粉じんばく露の可能性がなかった

Cさんの石綿肺等発症との因果関係

  • 原告側の主張:被告の業務によるばく露が原因
  • 被告の主張:ほかの原因も考えられる

被告の安全配慮義務違反または不法行為

  • アスベストの危険性を知ることができたのに対策をしなかった
  • 作業場に十分な換気装置を設置せず、粉じん対策も不十分だった
  • Cさんにマスク等の着用の説明もなかった
  • 定期的な健康診断やアスベストの危険性についての教育を行わなかった

Cさんの損害

  • 慰謝料・弁護士費用
  • 慰謝料額と既払金の損益相殺

Dさんの損害

  • 介護による精神的・肉体的苦痛
  • 労災申請手続等の負担
  • 慰謝料と弁護士費用

裁判所の判断

裁判所は、Cさんが長期間アスベスト粉じんにばく露していたことを認め、これが石綿肺等の発症原因であると判断しました。
また、被告はアスベストの危険性を認識すべきであったのに、適切な安全対策を怠っていたことも認めました。具体的には、作業場に適切な排気装置を設置せず、防じん対策が不十分であったこと、従業員に対するマスク等の着用指導が適切に行われていなかったことなどを理由として挙げています。

裁判所は、Cさんの精神的苦痛に対して約2,290万円の賠償を命じました(ただし、すでに支払われた見舞金120万円については控除しました。)。
さらに、Cさんの娘であるDさんが介護や各種申請手続等の負担による精神的苦痛を受けたとして、約110万円の賠償も認めました。

※本ページで紹介している事例は、当事務所が実際に対応したものではありません。

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