建設作業従事者がアスベスト含有建材を扱う作業でアスベストにばく露した事例

判決
最高裁判所第1小法廷令和3年5月17日
判決で認められた額
省略

※集団訴訟の場合は、全ての原告の認容合計額を記載しています。

概要

この事件は、建設作業に従事していた原告たちが、アスベスト(石綿)粉じんにばく露し、その結果としてアスベスト関連の疾患(石綿肺、肺がん、中皮腫など)にかかったとして、被告である建材メーカーに対し、損害賠償を求めたものです。

原告たちは、建材メーカーの製造販売したアスベスト含有建材が、彼らの作業する建設現場に相当回数運び込まれていたことについての証拠を提出しました。
しかし東京高裁では、原告たちの立証手法を一律に否定し、請求を棄却しました。特に、主張のもとになった国交省データベースの信用性の低さや、確率計算の前提条件が満たされていないことなどを理由にしました。

裁判のポイント

立証手法の合理性

  • 原告たちが採用した立証手法が合理的であるかどうか

国交省データベースの信用性

  • 国土交通省が公表したデータベースの情報の信頼性

市場占有率(シェア)を用いた確率計算

  • 市場占有率を用いて建材の現場到達を推認する手法の妥当性

被災者の記憶に基づく供述の信用性

  • 被災者の具体的な記憶に基づく供述の信用性と、それに基づく事実認定の妥当性

建材メーカーの反論と立証活動

  • 建材メーカーが販売量等について具体的な反論をしない場合の考慮

経験則や採証法則について

  • 東京高裁の判断が経験則や採証法則に反するかどうか

裁判所の判断

最高裁は、原告たちの立証手法を否定した東京高等裁判所の判決を破棄しました。そして、さらに審理を尽くさせるために、この事件を東京高等裁判所に差し戻すことを決めました。
具体的には、原告たちが提示した国土交通省データベースは、相応の信用性があるとしました。
また、市場占有率を用いた確率計算についても、建材の現場到達事実を推認するために有効であることも認めています。

ほかにも、被災者の記憶に基づく供述について、その内容の具体性やほかの事情との整合性を検討すれば事実として認定可能と判断しました。被告側が具体的な立証活動を行わない場合には、そのことも踏まえて、原告たちの立証手法に基づく認定が可能であるとされました。

※本ページで紹介している事例は、当事務所が実際に対応したものではありません。

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