勤務先の建物の吹き付け材に含まれるアスベストにばく露し、悪性胸膜中皮腫を発症後、自殺により死亡に至った事例
※集団訴訟の場合は、全ての原告の認容合計額を記載しています。
概要
Aさんは株式会社Bの取締役店長として、株式会社Bの使用する建物で勤務していましたが、その後、悪性胸膜中皮腫と診断され、数年後には自ら命を絶つことになりました。
Aさんが勤務していた建物には、アスベスト(石綿)を含む吹き付け材が施工されていました。
原告であるAさんの家族(妻と3人の子供たち)は、Aさんが勤務中にアスベストを吸い込んだことで悪性胸膜中皮腫を発症し、最終的に自殺に至ったとして、被告Y1と被告Y2に対して損害賠償を求める訴訟を提起しました。
なお、被告Y1 は鉄道事業などを行う会社で、被告Y2は建物のメンテナンスや清掃を行う会社です。
裁判のポイント
Aさんの病気の原因と自殺との関係
- Aさんが勤務していた建物内でアスベスト(石綿)にさらされたことが原因で病気になったのか
- Aさんの病気が直接的に自殺の原因になったのか
被告Y1・Y2の責任
- 被告Y1は建物の占有者・所有者として、Aさんがアスベストにさらされないようにする義務を果たしていたか
- 被告Y2は建物の賃貸人として、アスベストの危険を防ぐ義務を果たしていたか
原告らの損害
- Aさんの治療費、入院費、休業損害、死亡による損害など
- 上記の損害に対して弁護士費用も含めてどれだけの賠償が求められるか
過失相殺
- Aさんが自殺したことに対して、その責任の一部がAさん自身にあるとするかどうか
裁判所の判断
裁判所は、被告Y1が建物の占有者・所有者として、Aさんがアスベストにさらされないようにする義務を果たしていなかったと認定しました。
具体的には、アスベストの危険性が知られていたにもかかわらず、適切な対策を怠ったことがAさんの病気の原因となったと判断しました。その結果、被告Y1に対して一定の損害賠償を命じました。
ただし、すべての請求が認められたわけではなく、一部の請求は理由がないとして棄却されました。
一方、被告Y2に対しては、裁判所は安全配慮義務違反に基づく責任は認めることはできないと判断しました。そのため、原告の被告Y2に対する請求はすべて棄却されました。
※本ページで紹介している事例は、当事務所が実際に対応したものではありません。