アスベスト建材を扱う建設労働者が健康被害を発症した事例
※集団訴訟の場合は、全ての原告の認容合計額を記載しています。
概要
この事件は、建設現場でアスベスト(石綿)を含む建材を扱っていた労働者やその遺族が、アスベストを製造販売していた会社を相手に損害賠償を求めたものです。
原告側の労働者(被災者)は、アスベストが含まれた建材を使用した結果、アスベストの粉じんにさらされ、石綿肺や肺がん、中皮腫などの病気にかかりました。
訴訟の主なポイントは、被告の企業がアスベストの危険性について警告すべき義務があったにもかかわらず、それを怠り、アスベスト含有建材を製造販売したというものです。
そのため、原告は企業の不法行為を理由に、慰謝料や弁護士費用を含む損害賠償金を求めています。
裁判のポイント
被告企業の予見可能性
- 建設作業従事者がアスベストにばく露する危険性を、被告企業が予見できたかどうか
製造販売の一時中止義務および販売製造禁止義務違反
- 被告企業がアスベストの危険性を認識した時点で、製造や販売を中止・禁止する義務があったかどうか
警告義務違反
- 被告企業がアスベストの危険性について適切な警告を行う義務を怠ったかどうか
製品の現場到達の立証
- 被告企業のアスベスト含有建材が実際に現場に到達したことをどのように立証するか
アスベストのばく露と病気の因果関係
- アスベストばく露が病気の直接的な原因であるかどうか
裁判所の判断
裁判所は、被告であるアスベスト含有建材を製造販売していた企業は、原告側の労働者に対する損害賠償責任を負うと判断しました。
裁判所は、昭和48年にはアスベストが健康に悪影響をおよぼすことを企業は予見できたと判断しました。
さらに裁判所は、昭和50年以降はアスベストの危険性について、屋内建設現場における建設作業従事者との関係で、自らが製造・販売したアスベスト含有建材の危険性とその回避手段について警告する義務が企業側にあったと認めました。
次に、各企業の製造したアスベスト建材が実際に被害者の作業現場に到達していたことがシェアを用いた確率計算を用いた手法により確認されました。
またアスベストばく露と病気の因果関係が医学的に立証され、喫煙歴がある場合は慰謝料が一部減額されるものの、損害賠償が認められると判断しました。
これにより、原告には慰謝料と弁護士費用の損害賠償が認められました。
※本ページで紹介している事例は、当事務所が実際に対応したものではありません。