造船所労働者がアスベスト粉じんのばく露でじん肺・肺がんを発症した事例
※集団訴訟の場合は、全ての原告の認容合計額を記載しています。
概要
この事件は、原告である長崎造船所で働いていた労働者の方やその遺族の方たちが、アスベスト(石綿)の粉じんにさらされたことによってじん肺や肺がんになったと主張し損害賠償を求めたものです。
原告たちは、造船所の運営者である被告の安全配慮義務違反により健康被害を受けたと主張。具体的には、被告がアスベストの危険性を十分に認識しながら、労働者をその粉じんにさらし続けたことが原因だとして、損害賠償を求めました。
賠償額には、じん肺や肺がんによる健康被害に対する損害賠償金と、それに対する遅延損害金が含まれています。
裁判のポイント
じん肺や肺がんへの罹患の有無
- 原告の労働者たちが病気にかかったことが証明されているか
造船所での作業と病気との因果関係
- 病気にかかった原因が造船所での作業であることが証明されているか
安全配慮義務違反の有無
- 造船所が労働者の安全や健康を守るための十分な対策を怠ったかどうか
【原告の主張】
- 下請労働者が元請業者の管理する事業所で作業している場合、元請業者は下請労働者に対しても安全配慮義務を負う
【被告の主張】
- 下請労働者に対する安全配慮義務を負うのは下請会社であり、元請業者である被告は安全配慮義務を負わない
過失相殺の可否
- 労働者側に喫煙などの健康管理上の過失があったかどうか
- 労働者側に過失があった場合に、賠償金額を減らすべきかどうか
損害額
- 労働者が受けた健康被害に対する賠償金額がいくらになるか
消滅時効の成否
- 損害賠償の請求権が時効によって消滅しているかどうか
裁判所の判断
裁判所は、原告らのじん肺や肺がんの発症が造船所での粉じんばく露に起因すると認定しました。専門家の意見や医学的証拠をもとに、アスベストなどの粉じんが健康に重大な影響を与えることを確認し、各原告のばく露歴や作業環境、保護具の使用状況を詳細に検討。喫煙歴も考慮されましたが、粉じんばく露が主な原因であると判断しました。
また、被告は粉じん対策を講じていたものの、平成初期ごろまでの対策は不十分であり、多くの原告がその影響を受けて健康被害を被ったと認められました。
その結果、じん肺や肺がんを発症した原告らには慰謝料が、死亡した労働者の遺族にも相応の賠償が認められ、被害状況や喫煙の影響を考慮して損害額が算定されました。
※本ページで紹介している事例は、当事務所が実際に対応したものではありません。