公共施設の管理業務をしていた労働者がアスベスト(石綿)にばく露し、アスベスト関連疾患に罹患し死亡した事例
※集団訴訟の場合は、全ての原告の認容合計額を記載しています。
概要
この事件は、アスベストの粉じんにさらされたことが原因でじん肺(石綿肺)および肺がんを患い、のちに肺炎で亡くなったと労働者(Dさん)の遺族の方が主張し、市と勤務先企業に対し損害賠償を求めたものです。
Dさんは平成2年から平成17年まで、北九州市が設置した北九州市立総合体育館の設備管理業務に従事していました。この体育館の建材にアスベストが含まれており、Dさんはその粉じんに長期間さらされていました。
北九州市に対しては国家賠償法に、勤務先企業に対しては民法に基づいて、慰謝料や葬祭料、弁護士費用などの損害賠償を請求しました。
具体的には、遺族は総額3,465万円の賠償を請求。加えて、遅延損害金の支払いを求めました。
裁判のポイント
Dさんの作業内容およびアスベスト粉じんのばく露
- 体育館内に有害なアスベスト粉じんの飛散などがあったかどうか
- Dさんがアスベスト粉じんに長期間さらされる作業に従事していたかどうか
アスベスト粉じんばく露と死亡との因果関係
- Dさんの死亡にアスベストばく露との因果関係が認められるかどうか
被告である市の責任の有無
- 体育館の設置や管理に問題がなかったかどうか
- 安全対策を講じていたかどうか
損害の発生および額
- Dさんの病気や死亡に喫煙などほかの原因がどれくらい影響したか
- Dさん自身の過失があったかどうか
裁判所の判断
裁判所は、Dさんの遺族である原告らの方に対し、市および勤務先企業に連帯して損害賠償責任があると判断。原告Aには1,700万円、原告Bおよび原告Cにはそれぞれ440万円の賠償と遅延損害金の支払いを認めました。
Dさんは本件体育館でアスベスト粉じんにばく露する危険性の高い作業に従事しており、アスベスト粉じんばく露が肺がんおよび肺機能障害を引き起こし、死亡につながったと判断。
市はアスベスト含有建材の存在を認識していながら適切な対策を講じなかったため、設置または管理に問題があるとされました。また、勤務先企業もアスベストの危険性を予見し、適切な防じん対策を行うべき義務を怠ったと認められ、両被告は連帯して損害賠償責任を負うこととなりました。
※本ページで紹介している事例は、当事務所が実際に対応したものではありません。