アスベスト(石綿)はいつから禁止された?健康被害の救済制度も解説
更新日:2024年08月13日
この記事でわかること
- アスベスト(石綿)の使用が禁止された時期
- アスベスト(石綿)を取り巻く現状と課題
- アスベスト(石綿)健康被害に対する救済制度
アスベストは、かつて「奇跡の鉱物」とも称され、家庭用品や建材などに幅広く使用されていました。
しかし、健康へのリスクが明らかになり、日本においては1975年より段階的に使用が規制され、2006年に全面的な使用禁止がなされています。
本コラムでは、アスベスト(石綿)の使用が禁止された時期や、その理由・背景、現在の状況・課題について詳しく解説します。
- 目次
アスベスト(石綿)が使用されていたもの
アスベスト(石綿)は、熱や摩擦、酸・アルカリに強く、丈夫で変化しにくい性質をもっています。耐火性、断熱性、防音性、絶縁性などに優れたうえ、安価で手に入ることから、多くの家庭用品や建築物などに使用されていました。
以下でアスベスト(石綿)が使用されていた主な家庭用品と建築物をそれぞれ見ていきましょう。
アスベスト(石綿)が使用された家庭用品など
アスベスト(石綿)が使用されていた主な家庭用品は、以下のとおりです。
種類 | 具体的な製品 |
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電気製品 |
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ガス・石油製品 |
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その他 |
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このほかにも、2005年に経済産業省が行った調査では、185社774製品にアスベスト(石綿)を使用しているとされていました。
なお、アスベスト(石綿)が使用されているのは、これらの製品のごく一部(パッキン部分など)です。
アスベスト(石綿)が使用された建築物など
アスベスト(石綿)が使用されていた主な建築物は、以下のとおりです。
種類 | 具体的な場所 |
---|---|
住宅 |
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ビル・公共施設 |
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なお、アスベスト(石綿)らしき吹付け材料が見た目にはわからない場合でも、天井裏や外壁面などの隠れたところに使用されていることもあるとされています。
アスベスト(石綿)の使用が禁止された理由
このように、さまざまなものに使用されていたアスベスト(石綿)ですが、現在では新たなアスベスト(石綿)製品の製造・使用等は原則として禁止されています。
これは、アスベスト(石綿)のもつ性質が、人に健康被害をおよぼすリスクが高いためです。
アスベスト(石綿)には、その極めて細かい繊維が空中に浮遊しやすく、丈夫で変化しにくいという性質があります。
そのため、人が吸い込んでしまいやすく、肺に沈着したあとも体内で分解されずに、炎症や病気を引き起こしてしまうのです。
このような健康被害が徐々に認識されるようになり、人々の健康を守るためにアスベストの使用が禁止されました。
アスベスト(石綿)が原因で発病する可能性のある病気
アスベスト(石綿)を吸い込むと、以下のような病気を発病するおそれがあります。
- 中皮腫
- 肺がん(原発性肺がん)
- びまん性胸膜肥厚
- 石綿肺
- 良性石綿胸水
これらの病気は、病態によって10~50年程度の長い潜伏期間を経て発病するため、早期発見が難しいとされています。
病態別の具体的な症状については、以下のコラムでも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
アスベスト(石綿)はいつから使用が禁止された?
アスベスト(石綿)の使用は、1975年より段階的に規制され、2006年に全面禁止(製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止)されました。
一部の製品に対しては猶予措置があったものの、2012年には猶予期間が終了したため、現在では、建築や製造においてアスベスト(石綿)が使用されることはありません。
アスベスト(石綿)健康被害の解決に向けた法律の制定が開始したときから、全面禁止までの大まかな流れは、以下のとおりです。
アスベスト(石綿)が全面禁止されるまでの経緯
年代 | 制定・改正された法律 | 規制の内容 |
---|---|---|
1975年 | 特定化学物質等障害予防規則 | 5重量%を超える石綿の吹き付けを原則禁止 |
1995年 | 安全衛生施行令 安全衛生施行規則 特定化学物質等障害予防規則 |
1重量%を超える石綿の吹き付けを原則禁止 アモサイト・クロシドライト製品の製造等の禁止 |
2004年 | 安全衛生施行令 | 1重量%を超える石綿含有建材・製品10品目の製造等の禁止 |
2006年 | 安全衛生施行令 | 0.1重量%を超える石綿含有製品の全面禁止 |
2012年 | 安全衛生施行令 | 0.1重量%を超える石綿含有製品使用禁止の猶予措置撤廃 |
アスベスト(石綿)健康被害の現状と課題
アスベスト(石綿)が全面禁止されたからといって、健康被害の問題がすべて解決したわけではありません。
以下で、アスベスト(石綿)健康被害の現状と課題について、詳しく解説します。
【現状】アスベスト(石綿)健康被害が顕在化している
アスベスト(石綿)にばく露しても、すぐに病気になるわけではありません。
病態によっては長い潜伏期間を経て発病するため、過去にアスベスト(石綿)にばく露した方の健康被害は、年々顕在化しているのが現状です。
たとえば、アスベスト(石綿)が発病の原因のほとんどであるとされている中皮腫は、アスベストばく露から約20~50年程度の潜伏期間を経て発病するとされています。
以下のグラフは、日本で中皮腫によって死亡した方の人数の推移です。
中皮腫による死亡数の推移
※上記グラフは、厚生労働省『都道府県(特別区-指定都市再掲)別にみた中皮腫による死亡数の年次推移(平成7年~令和4年)』に基づき、当事務所が独自に作成したものです。
このように1995年に500人であった死亡者数は、2022年には1,554人と約3倍以上に増加しています。
日本で大量にアスベスト(石綿)が使用されていたのは1960~1980年ごろであることからも、健康被害のピークを迎えるのは2030年ごろともいわれており、今後も注意していく必要があるでしょう。
【課題】建物解体時の飛散防止対策や補償制度の周知を検討する必要がある
現在でも、過去にアスベスト(石綿)含有建材を使用して建てられた建物は多数残っています。
そして、これらの建物は2030年ごろに解体のピークを迎えると見込まれています。
そのため、アスベスト(石綿)含有建材を使用した多くの建物の解体・改修の際の飛散防止対策が新たな課題となっているのです。
また、アスベスト(石綿)健康被害にあった方やその遺族の方の救済も、依然として大きな課題だといえるでしょう。
さまざまな補償制度や国への賠償金・給付金請求について、広く周知していく必要があります。
アスベスト(石綿)健康被害に対する補償制度
アスベスト(石綿)を扱う建設現場や工場で働いていた方が健康被害にあった場合、労災保険や石綿健康被害救済による給付を受けられる可能性があります。
それに加えて、要件を満たす方が国に対し給付金・賠償金請求し、病態に応じ550万円~1,300万円を受け取ることも可能です。
国から支払われる給付金・賠償金の病態別の金額について詳しくは、「国から支払われる金額」をご覧ください。
なお、給付金・賠償金を請求するためには、医師の診断書をはじめとするさまざまな資料をそろえなければなりません。手間や労力がかかるため、ご自身で手続をするのが不安であれば弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
アスベスト(石綿)は、かつてその優れた性質から広く使用されていましたが、その有害性が明らかになるとともに、段階的に禁止されました。
日本において、1970年代から始まった規制は徐々に強化され、2006年には原則として全面的に使用禁止となっています。
しかし、過去に製造・使用されたアスベスト(石綿)の管理やアスベスト(石綿)による健康被害にあった方の救済に関しては、まだまだ課題が残っているのが現状です。
アスベスト(石綿)に起因する病気は、長い潜伏期間を経て発病するため、ご自身が給付金・賠償金の対象になるかどうか、不安や疑問を抱えている方も多いでしょう。
アディーレ法律事務所では、アスベスト(石綿)健康被害の給付金・賠償金請求に関するご相談は何度でも無料です。
アスベスト(石綿)による健康被害にあわれた方やご遺族の方は、お気軽にご相談ください。